湾岸エリアのカルチャー
ペルシャ湾に面している地域のことを湾岸エリアと中東地域では言います。
この“湾”のことをアラビア語でKhalij(ハリージ)ということから、このエリア特有のカルチャーを「Khalijee(ハリージー)=ハリージに属すもの」と言います。
バーレーン、クウェート、UAE、カタール、サウジアラビア東部、オマーン北部、イラク南部、イラン南部のハリージ地域は、昔から貿易が盛んな地域でした。
7世紀にこの地域でイスラム教が誕生する前から、イタリア、ギリシャ、アフリカ、アラブ、ペルシャ、インドから多くの人々が貿易を目的に集まっていました。
商人たちが今世に残してくれたもの、それが豊かなハリージー・カルチャーです。
例えば、イラン南部のペルシャ湾に面したホルモズガーン州にはアフリカ系イラン人(Afro-Iranian)コミュニティー特有の儀式や音楽があります。
ディンゴマロ(Dingomaro)=アフリカから吹く風で知られるアフロ・イラニアン・ミュージック。400年以上の歴史を持つこの音楽は、今となってはイランの他の地域はもとよりホルモズガーン州でもあまり聞かれなくなっています。
はるばるアフリカからやってきた人々が故郷の風を懐かしみ刻んだリズムも貴重なハリージー・カルチャーの一つです。
ハリージーの女性
一方で社会におけるハリージ地域は、女性の立場が著しく低いことでも知られています。例えば、サウジアラビアでは女性が車を運転するこが禁じられています。またハリージ地域では女性の服装が他の中東地域と比較して保守的であると言われています。
家を一歩出れば、女性が全身を覆うことが求められているこの地域ですが、近年女性のファッションの改革を通して、社会における女性の権利や立場の見直しが急速に進んでいるのもハリージー地域なのです。
例えば、第6代サウジアラビア国王の娘アディラ(Adila bint Abdulla Al Saud)は、女性の家庭内外での権利のために勢力的に活動してきたインフルエンサーです。
アディラはこの地域特有のファッションである二ガブ(顔を隠す布)を着用しないで公共の場に姿を出すことで、ハリージ女性に関するモラルや価値観を変えていこうとしています。
ハリージー・ポップカルチャーを発信するフィユンカ🎀
アラビア語でリボンを意味するフィユンカは、湾岸エリアのポップカルチャーを世界に発信するファッションブランド。
サウジアラビア出身のデザイナー、アラー・バルヒー(Alaa Balkhy)はSNSを通じて湾岸エリアの様々な地域で暮らす女性たちと繋がることで、湾岸文化の多様性に気付かされたと話します。湾岸エリアの多様性そしてハッピーを世界に届けるために立ち上げたファッションブランド、フィユンカはニューヨークやパリなどファッション都市でも広く支持されています。
フィユンカNY
アラー・バルヒーは、ハリージー女性の多様なファッションや生き方を否定せずに全てを受け入れることをモットーにしていると話します。
保守的と言われるコミュニティーのモラル、リベラルと言われるコミュニティーの価値観に間で揺れ動くハリージー女性たちですが、全ての女性が、自分の納得のいくファッションをすること。それが女性の権利であり、女性の自信につながるのでしょう。
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