国境を超えた移動が身近になり、人と人とが近づき、国という概念が変化していくように思われたグローバリゼーション。しかし時の経過とともに世界が逆走し、国家主義や民族主義が色濃くなっているように感じるのは気のせいでしょうか?
グローバリズムと反グローバリズムの間で潰されている人たちがいます。
それは、国境を超えて「移動」をする人たちです。
その中でも、自分の意思とは反して余儀なく移動をする人たち、難民は刻々と変わる世界のグローバル化そして反グローバル化の波に溺れてしまっています。
今年に入り日本政府は、この先5年間で300人規模のシリア難民を受け入れる意向を発表しました。この数字が、世界の流れと比較して、日本にとって少ない数字なのか?それとも適しているのか?様々な考えがあると思います。しかし日本の今後のためにもアンビバレントな世界を深く掘り下げ、そして議論をする場が不足しているように思われます。
ヨコハマトリエンナーレ2017「島と星座とガラパゴス」は、「接続」と「孤立」をテーマに、相反する価値観が複雑に絡み合う世界の状況について考える「場」を提供してくれます。
38組+1プロジェクトの参加が発表されていますが、そのなかでも今最もアンビバレントな世界そして具体的には難民問題に取り組んでいる中国人アーティストそしてアクティヴィスト艾未未(アイ・ウェイウェイ)のこれまでの作品そして活動を紹介します。
艾未未、これまでの彼と難民
難民との出会い
中国人アーティストそしてアクティヴィスト艾未未(アイ・ウェイウェイ)と難民の出会いは2015年、インド出身アーティスト、アニッシュ・カプーア(Anish Kapoor)と共にロンドンで行ったデモ行進に遡ることができます。アイとアニッシュは、難民に配られる毛布と同じものを体に巻き、難民との連帯を訴えました。
また2016年には、多くのシリア難民がトルコからエーゲ海を横断して辿り着くレスボス島(ギリシャ)でスタジオを設けました。
私たちが海岸沿いに車を走らせていたとき、がらんとした船が海上をただ漂泊していた。私は車を飛び降りて、半分沈みかけたその船によじ登った。私はそこでしばらくの間、そんな風に海を漂いながら瞑想した。この時レスボス島にスタジオを移そうと決めた。
海岸に横たわる少年
2015年9月トルコのビーチリゾート、ボドルムの海岸に打ち上げられた一人の男の子の写真は世界中の人々にシリアの内戦の深刻さを突きつけました。この3歳の男の子は、政府勢力、反政府勢力、クルド人武装勢力、そしてIS(ダーイッシュ)が対立するシリアで暮らすクルド人でした。
艾未未は、海岸に打ち上げられた男の子と同じように海岸に横たわり、世界にこの地球上の誰かの問題はみんなの問題でもあると訴えかけました。
世界中のメディアがシリアや難民のニュースを毎日取り上げるなか、彼はこの一枚の写真を発信することで、遠くの問題を知るだけでなく、自分をその立場に置いて考えることの大切さを思い出させてくれました。
ライフジャケット
彼は立て続けに、彼のスタジオがあるレスボス島にボートに乗って避難してくる難民たちが来ているライフジャケットを使った作品を発表しています。
2016年ベルヴェデーレ宮殿(オーストリア・ウィーン)で開催した個展『translocation – transformation』では、宮殿の池にライフジャケットをローマ字のFの形に浮かせた『F Lotus』(Fの蓮)を発表しました。
この作品では実際に艾未未(アイ・ウェイウェイ)のスタジオがあるレスボス島の海岸に落ちてた1005着の難民によって使われたライフジャケットが使われています。
さらにドイツ・ベルリンのGendarmenmarkt(ジャンダルメンマルクト)では1万4千着ものライフジャケットを使用して作品を発表。
ライフジャケットの使用に代表される艾未未(アイ・ウェイウェイ)のいわゆる「難民アート」は難民の問題が解決を迎える日まで続くのでしょう。
『人流』
艾未未(アイ・ウェイウェイ)は、22カ国を難民とともに歩みドキュメンタリー映画『人流 (Human Flow)』を制作、2017年夏に公開することを発表しました。
難民危機ではなくあるのは「人間危機」だ。
難民と向き合う時、私たちの基本的な人間としての価値観が揺さぶられる。
ヨコハマトリエンナーレ2017での作品とあわせて、今年の夏は艾未未(アイ・ウェイウェイ)の次なる人間社会への警告!を世界はどう受け止めるのでしょうか。
会 期 | 2017年8月4日(金)‐ 11月5 日(日) 開場日数:88日間 |
休 場 日 | 第2・4木曜日(8/10、8/24、9/14、9/28、10/12、10/26) |
会 場 | 横浜美術館/横浜赤レンガ倉庫1号館/横浜市開港記念会館 地下 他 |
開場時間 | 10:00 – 18:00 (最終入場17:30) [10/27(金)、10/28(土)、10/29(日)、11/2(木)、11/3(金・祝)、11/4(土)は20:30まで開場(最終入場20:00)] |
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