ハラールエキスポジャパン2016
2016年11月22日(火)、23日(水)と二日間に渡り東京都立産業貿易センター台東館にてイスラムにまつわるモノ・コトを幅広く扱うエキスポ「ハラールエクスポジャパン2016」が開催されました。
出展ブースは90あり、大きく分けて「行政・地域」、「食品」、「美容・服飾品・美術」、「情報・サービス」の4つのカテゴリーに分けられています。
4つのカテゴリーの中で最も出展企業数が多いのは「食品」です。
近年日本では“ハラールフード”という用語が定着し、ハラール認証制度も整ってきています。
近年日本で一気に広まったイスラムの要素が、イスラム教の考えやモスクを代表としたイスラム美術、さらにはイスラム教の人口が多い中東地域の紛争にまつわる議論などではなく「食」であるというのは日本らしいな〜と思います。
そんなことから、ハラールエキスポと聞いてエスニックな食べ物が食べれるのか?とワクワクする響にも聞こえます。。。
しかし今回の目玉は、日本初!イスラムファッションショーでした。
そこで、日本初イスラムファッションショーはなぜ開催されたのか?考えてみます。
イスラムと聞いて何を思い浮かべる?
イスラム教徒と聞くと、どの国そして地域を思い浮かべるでしょう?
日本でのイスラム教と国・地域の関連付けに関する調査を是非実施したいところですが、、
どうでしょう?
イスラム教=モスクでしょうか?
イスラムとイスラーム、日本語では両方の表記で知られていますが、近年のISISへの注目さらには日本メディアによる「イスラム国」という名称の起用によりイスラムを宗教ではなく過激な思想を持った集団として認識している日本人は多いようです。
早稲田大学人間科学学術院の「外国人に関する意識調査」 岐阜市報告書によると、「イスラム教に関して最も耳にする内容」の回答で「紛争や事件」が最も多く56.8%でした。
それは日本に限ったことではなく、次期アメリカ大統領ドナルド・トランプは“イスラム教徒の入国を全面禁止する”といった過激な発言から、トランプ支持者からの嫌がらせを恐れてイスラム教徒であることを隠す為にスカーフの着用を断念する人もいます。
また、イスラム教徒の難民や移民が多く暮らすフランスではイスラムに対する風当たりはさらに厳しいものです。
フランスではスカーフで頭を覆ったイスラム教徒への嫌がらせや差別、さらには今年の夏注目されたイスラム教徒の女性の水着「ブルキニ」着用の禁止など記憶に新しいです。
世界がイスラムそしてイスラム教徒の服装に敏感な中、日本ではファッションショー!
この差はどこから生じているのでしょうか?
日本がイスラムに寛大なのはハラールフードのおかげ?
ところで、ハラールとはなんでしょう?!
簡単に言うとハラールとは、イスラム教の観点から見て”清潔”であるモノ・コトを言います。
逆に“不潔”でありよろしくないモノ・コトをハラームと言います。
ハラールフードとはイスラム教が食べていいと判断した食品のことです。
イスラム教では一貫して豚肉、お酒を食べないのに加えて宗派や地域によって異なる食品が禁止(ハラーム)されています。
人間が生活する上で欠かせないモノの一つが「食」ですがそれがどんなハラールのどのカテゴリーよりも先に広まったのにはその需要があったからです。
- 市場としてのハラールフード
- 留学生
- 旅行者
まずは1から、、、
2009年3月に農林水産省の食品産業海外展開支援事業が「マレーシアハラル制度の基礎と応用」という報告書を公開しています。この頃からマレーシアをはじめとした日本の近隣諸国でイスラム教徒が多い食品市場に日本政府そして企業が目を向けるようになりました。またハラールエキスポが開催されるようになった背景にはこのハラールフードの市場としての可能性に日本の企業が魅力を感じた事が多いに働いていることも明らかです。
また、メディアがハラールという用語を使うようになったのもこの頃からではではないでしょうか?
Google Trendsによると、「ハラール」のキーワード検索が2009年3月に日本で急激に増加しまし、それ以降右肩上がりです。
ここで、日本では「ハラール」と「ハラル」ふた通りの表記でHalalが書かれていた事がわかります。しかし現在では「ハラール」と伸ばす表記の方が定着してきているように思えます。
さて、2.留学生はどうでしょう。
独立行政法人日本学生支援機構の調査によると、3,600人(2015年)のインドネシアからの留学生が日本の学校に在籍していました。この人数は日本に来る留学生全体の1.7%を占めています。
インドネシア・・・?イスラムとどんな関係が?
イスラム教徒の人口が最も多いのは中東地域の国じゃない?
いやいや違うんです。
アメリカのシンクタンク「ピュー研究所」の調査を参考にすると、2010年の時点で世界人口の13.1%のイスラム教徒はインドネシアで暮らしているのです。
また、イスラム教が国教となっているマレーシアからは日本に来る留学生全体の1.2%にあたる2,594人(2015年)の留学生が日本の学校に在籍していました。
3.旅行者はどうでしょう。
ここではイスラム教徒が多く、日本政府観光局にデータのあるシンガポール、マレーシア、インドネシア、インド、トルコのデータを取り上げます。
国名 |
累計 |
伸率 |
シンガポール |
308,783 |
35.5 |
マレーシア |
305,447 |
22.4 |
インドネシア |
205,083 |
29.2 |
インド |
103,084 |
17.2 |
トルコ |
17,274 |
17.0 |
どうでしょう?
これらのデータで一概には言い切れませんが、
日本にやって来るイスラム文化の多くは、
近隣諸国のイスラム文化なのではないでしょうか?
日本ではイスラムと聞くと「危険!」「イスラム国」「テロ」と残念ながら繋がってしまう一方で、ハラールフードで一気に知られるようになったハラールというキーワードは近隣諸国のイスラム教徒の留学生や旅行者の影響もあって比較的明るいワクワクする印象を与えるようです。
是非ともイスラムとハラールの意識調査をしたいところです。
イスラムエキスポではなくハラールエキスポであることも、こういった世論が抱くイスラムとハラームに対する印象の違いから来るのでしょう。
こういった背景から、世界でイスラム教徒やそれを連想させるファッション文化が抑圧されている一方で日本ではイスラム教徒のファッションショーを開催することができるのだと思います。
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