NEWSWEEK 日本版「Instagramフォトグラファーズ 」でイラン人写真家、マジッド・サイーディが紹介されています。
マジッド・サイーディは、戦時下のアフガニスタンを撮影した写真集『Life in War』でその名が広く知られるようになりました。
アフガニスタン、イラク、レバノンの緊張感のある前線を撮影する一方で、マジッド・サイーディは人々の日常に溶け込み、日々の生活に影響を及ぼす問題に踏み込みます。 この記事では、マジッド・サイーディが写真を通して向き合うウルミエ湖(イラン)にフォーカスします。
イラン北西部に位置するウルミエ湖は、世界で第2番目に大きい規模の塩湖でありラムサール条約登録湿地、および、ユネスコのエコパークにも指定されています。
ウルミエ湖は、イランの西アーザルバーイジャーン州に位置しています。
西アーザルバーイジャーン州は、イラク、トルコ、アゼルバイジャン共和国と接しています。約268万6千人(2006年)が暮らしており、イランで8番目に人口の多い州です。 また、州の名前からも分かるように、西アーザルバーイジャーン州に暮らす人々の多くはアゼルバイジャン人です。
イランでは全国人口の25%をアゼルバイジャン人が占めているので、彼らは決して少数派ではなく、歴史的にもそして現在もイランにとって欠かせない存在なのです。
トルコ語によく似ているアゼルバイジャン語は、ペルシャ語の次にイランでよく使われている言語です。特に西・東アーザルバーイジャーン州では日常的に使われています。
ウルミエ湖の南に位置するHajji Firuz Tepeでは、世界最古のワインの痕跡とその壷が発見されています。このような発見からも、ウルミエ湖を含むこの一帯の歴史的重要性を読み取る事ができます。
文明の発展に多大な影響を及ぼしたであろうウルミエ湖は現在、ダム建設や温暖化の影響により水域面積が縮小しており水源管理の見直しが早急に求められています。ウルミエ湖の枯渇は、この地域一帯の農業のみならず観光業さらにはウルミエ湖周辺の湿地に飛来する渡り鳥やペルシャダマシカなどにも影響を及ぼしています。
そこで、イラン政府が協力を求めたのが日本政府でした。現在イラン政府は国際協力機構(JICA)の協力により、ダム建設や農業の見直しや節水といったあらゆる方法で本来のウルミエ湖を取り戻そうとしています。
また、レオナルド・ディカプリオが今年の5月に自身のインスタグラムでウルミエ湖の写真を現状の説明文を添えて投稿しました。世界的な関心が少しは高まっているのではないでしょうか。
さて、冒頭でご紹介したイラン人写真家マジッド・サイーディはどのようにウルミエ湖を写しているのでしょうか。彼のインスタグラムから何枚か写真をみてみましょう。
水が干上がり、塩で一面が雪景色のようになったウルミエ湖に残された船は枯渇の象徴として幾度となく写真におさめられてきました。しかしマジッド・サイーディの写真で船は単なる象徴ではなく、枯渇により動けなくなったことへの悲しみや水への恋しさを嘆いている様にも見えます。この船が水面で動き出す日はくるのでしょうか。
わずかに残されたウルミエ湖を見ようと訪れる観光客もいますが、訪れる観光客は減少しており周辺のホテルなども廃業しています。
しかしウルミエ湖の水が一面真っ赤に染まる時期は、その幻想的な景色を見ようと観光客が比較的多く集まります。この色の変化は、微細藻類によるもので、乾季になって塩分が濃く、光が強くなると、微生物の細胞中にカロテノイドが生成されるため、赤くなると言われています。
また黒いウルミエ湖の泥はリウマチや変形性関節症を治療すると言われており、この写真の様に治療を目的として訪れる人もいます。
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