中東で活躍する女性アーティストの挑戦

近年、中東地域の現代アートが注目されていますが、なかでも女性アーティストによる写真作品が中東現代アート界でひときわ存在感を放っています。

国立女性美術館(National Museum of Women in the Arts,Washington D.C.)にて開催された企画展『She Who Tells a Story』(2016年4月8日- 7月31日)は、女性アーティストが見た社会、政治、家族、そしてアイデンティティを再考する目的で開催されました。

『She Who Tells a Story』で展示された各作品のパワフルなメッセージ性は、メディアでは伝えられないこの地域の女性たちのバイタリティを物語っています。

中東地域の“外”にいる私たちの想像を超える数々のチャレンジを乗り越えてきて女性アーティストたちの作品。 イエメンの保守的な家庭で育ったBoushra AlMutawakelは、家族の反対そしてイエメン社会の常識・モラル・伝統の壁を乗り越えてきました。

『She Who Tells a Story』で展示された彼女の二つの作品を見てみましょう。

2001年9月11日の同時多発テロ発生後、当時アメリカにいたアーティストは「アメリカ人ムスリム」のアイデンティティに疑問を感じました。「どちらか一つを選ばなくてはいけないのか？」同時多発テロから15年、いまだにこの議題は続いています。

『Mother, Daughter, Doll』(2010)

本作品のモデルとなっているのは、アーティスト自身と実の娘です。 Bousharaは、この作品で初めて自身を作品の中に登場させました。 彼女の姿が不特定多数によって見られる事に対して保守的な家族の理解を得る事ができず苦労をしたと語っています。 本作品はアーティスト自身が実際に肌で感じているイエメン社会の保守化現象を表しています。「子供の頃、海岸に行ったときに見た女性達のカラフルなファッションが印象的でした。現在同じ海岸に行くと黒いベールに包まれた女性しかいません。 ベールの目的の一つとして、女性を男性の目線から守るというのが挙げられますが、本当にベールが女性を守っているのか、女性の尊厳が守られているのか疑問です」とアーティストは語っています。

一方、モロッコ出身のアーティストLalla Essaydiはオリエンタリズム的世界観を再考します。

『Bullet #3』(銃弾)と題されたこの作品は、西洋が長年にわたって中東地域に対して抱いてきた空想の世界を女性の身体を用いて具現化しています。 遠くから見ると金色に輝く魅力的なイメージですが、近づいてみると金色に輝く部分は全て磨かれた銃弾が埋め込まれています。

彼女は、オーディエンスの前で大きな声で歌います。それは想像でしかありませんが。そしてソロアルバムのジャケット撮影をします。ケースの中は空ですが。

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