中東地域の現代アートはイスラム美術ではない!というシリーズの第二弾ではこの地域にゆかりのあるアーティストに焦点を当てます。
“ゆかり”というのは、中東地域の国出身でずっとそこで暮らしているアーティストだけではないからです。
多くのアーティストは国外でディアスポラとしての生活を余儀なく強いられています。
自国で暮らししているからこそ見えること。
自国から離れているからこそ見えてくること。
中東地域のアーティストで最も有名と言っても過言ではないのが、
2017年に高松宮殿下記念世界文化賞絵画部門受賞など日本にゆかりのあるイラン系アーティストShirin Neshatです。
1974年にアメリカに留学。
大学卒業後、彼女はアメリカでアーティストとして活動を開始するのですが、その活動が原因で1996年以来イランに帰国することができなくなり亡命作家として“外から”イランを見つめるようになりました。
イランは1979年に起きたイスラム革命で政治そして社会が大きく変動しました。
革命前に国を離れた彼女は、アメリカにいながら革命後のイラン社会をシンボリックに描いています。
特に彼女の作品では、故国と亡命国、孤独と癒し、強さと弱さ、柔らかさと硬さ、女性性と男性性といった二項対立を作り出すことでイスラム革命後のイラン社会におけるジェンダー問題を彼女独自の視点から掘り下げています。
彼女の手法は写真にとどまらず、写真、ビデオ・インスタレーション、映画とさまざまな表現手段を駆使し、現代イスラム社会を生きる女性たちの政治的、社会的、心理的に抑圧された状況を描写しています。
この状況を描いた作品Turbulent
これらは女性の“悲しみ”を映し出しているのでしょうか。それともどこにも向けることができず心に押し込めている女性の言葉にならない途方にくれる訴えでしょうか。
鼻で呼吸ができなくなったら、口で呼吸する。
私にとってアートフォトグラフィーはもう一度呼吸をするための選択でした。
報道写真を撮ってきた彼女。 2009年に“緑の運動”と呼ばれるイラン国内の若者を中心としたデモ活動の勃発により、ジャーナリストとしての道をイラン国内で続ける事に困難に感じた彼女はアートの世界に可能性を見出しました。
サウジアラビア出身のアーティストManal Al-Dowayanは女性の活躍が自由になりつつあるサウジアラビア社会で今一度立ち止まりこれまで女性たちが置かれていた状況を見直すことの重要性を訴えます。
作品Suspended Togetherではワークショップに参加した女性が国外に出るときに「後見人*」によって発行された出国許可書を陶器で作られた鳩のオブジェにプリントしました。
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