「気まぐれコラム」今日のキーワードは、アフガニスタン、タリバン、そしてアフガニスタンで活躍してきたアーティストです。
アフガニスタンのこれまでの歴史を知りたい方は前回の気まぐれコラム「タリバンと文化遺産について」もあわせてお聞きください。

2021年8月16日にタリバンがアフガニスタンの首都カーブルを制圧することで実質タリバンが政権を握るアフガニスタンが誕生しました。

前回はアフガニスタンの文化遺産とタリバンのこれまでの歩みについてお話ししました。今回はアフガニスタンで活躍するアーティストたちが前政権崩壊そしてタリバン政権の発足に対してどのようなリアクションをしているのかお話しします。

タリバンの勢力が比較的弱かったこれまでのアフガニスタンでは国内外の団体が様々な文化活動を行ってきました。例えば、5年に一度ドイツのカッセルで開催される国際芸術祭ドクメンタ13(2012年)のサテライト会場としてアフガニスタンの首都アーブルが選ばれたのはとても大きな一歩でした。そもそもドクメンタはナチス・ドイツに退廃芸術とされていた芸術を回復させるためにナチス崩壊後に開催されました。そのため他の国際芸術祭と比較して政治的なメッセージ性が強いテーマそして作品がこれまで選ばれてきました。このような特質を持つ芸術祭がアフガニスタンで開催されたということは、これまであらゆる表現の自由を弾圧してきたタリバン勢力の衰退を象徴しているようなものでした。

一方で2001年にタリバン政権が崩壊してからも彼らはしばし国民への抑圧を続けていました。また時に文化活動が標的にされてきました。例えば、タリバンは2014年にフランス政府の文化機関であるアンスティチュ・フランセ カーブルの劇場を爆撃し多くの命が失われました。

タリバン政権が発足して以来、アフガニスタン国内で活動していたアーティストたちは国外に逃れようとしています。これまでアフガニスタンでジャーナリストや女性活動家がタリバンの標的にあい拘束されているニュースが入ってきています。メッセージ性の強い作品をアフガニスタン国内で発表してきたアーティストが標的になるのも時間の問題でしょう。

今回ポッドキャストで取り上げたアーティストは3名。

Shamsia Hassani はアフガニスタンのバンクシーと呼ばれています。これまでメッセージ性の強いグラフィティー作品を多くアフガニスタンの街中に残してきました。彼女の作品は現在、タリバンの手により白く塗りつぶされその上に彼らのスローガンが描かれています。

彼女と同じようにアフガニスタンの壁に作品を残してきたのがArtlordsです。代表のOmaid Sharifi は、これまでアフガニスタンで暮らすテーティストや工芸品の職人たちと共にアフガニスタンの壁を色鮮やかに描いてきました。彼らは時に子供たちを招き一緒に平和のメッセージを壁に描いてきました。平和、女性の人権、そして国民一人一人の笑顔をモットーにアフガニスタンを色鮮やかに彩ってきた彼らの作品も現在タリバンの手により塗りつぶされています。

アフガニスタンで活躍するフォトグラファーRada Akbarは、ニューヨークタイムズのインタビューで涙ながらに、一つ一つの街、村がタリバンに制圧されていくということはそこで暮らす人々の魂そして希望が死んでいくようなものだと話していました。彼女はこれまでの生活を6つのスーツケースに詰め込みカーブルの空港に向かいました。カナダやアメリカ政府に彼女のこれまでの活動を話しどうにか飛行機に乗せてもらおうと頼み込んだ結果、現在はフランスに逃れることができました。
彼女はこれまで様々な村を訪れそこで暮らす女性や子供たちの姿をカメラに収めてきました。またAbarzananというアートプロジェクトを立ち上げ、アフガニスタンの女性たちの勇敢な姿そして彼女たちがこれまで残してきた伝統や文化を再考する展覧会をアフガニスタン国内で開催してきました。

今回取り上げた3名のアーティストは運よくカーブルの空港から飛行機に乗りアフガニスタン国外に逃れることができました。しかし国内にまだとどまっているアーティストもいます。タリバンはジャーナリストや女性活動家などへの圧力さらには身柄を拘束して拷問を開始しているとも報じられています。アフガニスタンに戻りつつあった人権、そして表現の自由が束の間に消えつつあります。この状況の中、私たちにできることは微量かもしれません。しかしこの環境下でもなお表現を続けようとする彼らの存在を知る、そして周りに知ってもらうことだけでも彼らにとって大きな励みになるのです。


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