この写真に写る歴史的建造物の壁に書かれたアラビア文字やその他装飾、どう見てもモスクです。しかし実はこのモスク、40年間使われていないヴェネツィアにある教会の中に突如出現したアート作品なのです。

イタリアと中東地域の関係は9世紀まで遡ることができます。さらに現在イタリアには150万人のムスリム、約500のモスクが存在します。
しかし、歴史的街であるヴェネツィアにはモスクがないのです。

ヴェネツィアにおけるモスクの不在に疑問を投げかける目的でスイス出身のアーティストChristoph Büchelが現在開催中のヴェネツィア・ビエンナーレのアイスランド・パビリオンにてモスクを演出しました。
モスクにはアーティストの呼びかけで、多くのムスリムが集まりヴェネツィアで初めてとなる金曜日の集団礼拝が捧げられました。

しかし、その後、ヴェネツィア警察はこのモスクを閉鎖する事をアイルランド・パビリオンに命じました。
理由は、キリスト教会の中にモスクがあるというタブーに対するテロの危険性など。

Christoph Büchelにとっては、遥か昔から西洋とイスラム美術の交差点であったヴェネツィアにモスクを出現させる事がアート作品であり、この作品に参加したムスリムにとってはヴェネツィアで初めての金曜日の集団礼拝を叶えられたモスクそのものなのです。
この作品は、現在、テロ・過激・紛争といったイメージが一人歩きしているイスラムの信仰、さらには芸術としての原点を想起させると共に、世界規模のイスラムに対する間違った認識を浮き彫りにしました。