古代からある景色、遺跡、暮らしはいつまでも存在するのでしょうか?いつまでも永遠にピラミッドはあると信じている私たち。しかし時に、人間や自然は古代からのそれらを無残にも破壊してしまいます。

テロ組織ISIS(自称イスラム国)の最大拠点だったイラク北部モスルに紀元前700年から2015年まであった人頭有翼雄牛像ラマスは彼らの手によって破壊されてしまいました。ラマス像は、古代メソポタミア北部にあったアッシリア帝国の首都ニネヴァの門番の役割を果たしてきました。

バグダード出身の母親を持つアメリカ出身の作家マイケル・ラコウィッツ(Michael Rakowitz)は、かつての姿を失ってしまったラマス像をイラク産デーツシロップの空き缶を加工して作りました。

彼は2007年以降、イラク国内で破壊もしくは行方不明になっている文化遺産をイラク国内の新聞紙や日用品を使って再現するプロジェクト「見えない敵などいるはずがない(The Invisible Enemy Should Not Exist)」をシカゴ大学オリエント研究所の協力のもと行なっています。このデーツシロップの空き缶で作られたラマス像は2020年3月までロンドンのトラファルガー広場で展示されていました。また、このシリーズ作品の一部が2013年広島市現代美術館で開催された『サイト—場所の記憶、場所の力—』展にて展示されました。

イラクにおけるテロ組織ISISについてもっと知りたい方にはNetflixの新作映画「モスル」がおすすめですが、残念ながら日本での公開はまだ未定のようです。この映画は、ISISに占領されたイラクの街を取り戻すために特殊部隊が仕掛けたゲリラ戦の実話を元に描かれています。日本で公開された際にはぜひご覧ください。

title: The Invisible Enemy Should Not Exist(2007-on going)
artist: Michael Rakowitz

全ての作品をご覧になるには画像をクリックしてリンク先のアーティストのサイトでご覧ください。